「任務十八年」と念願の再会。角田光代著猫エッセイ『今日も一日きみを見てた』は小さな生きものへの愛にあふれた一冊です

角田光代著『今日も一日きみを見てた』(角川文庫、2017年6月25日発行)を買いました。
角田さんの愛猫、トトちゃんとの暮らしを綴ったエッセイです。

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私は、ボーナストラックとして収録されている「任務十八年」を読みたくて購入しました。3月に放送されたNHKのドキュメンタリー「ネコメンタリー 猫も 杓子も」の中で、角田氏描き下ろしの短編小説として朗読された作品です。

「さて、任務が終わったので帰ることとなった。借りていた衣を脱いで、もといた場所に帰る。」

この書き出しでもう、心をわしっとつかまれました。「任務」「衣」という言葉に衝撃を受けました。に、任務だったのか。衣だったのか……。そしてテレビから流れてくる朗読の声に、聞き入りました。

番組の放送日は今年の3月30日、花子の心臓病が判明した数日後のことでした。犬の命は人の命よりずっと短い。その現実に打ちのめされていた私の心に、物語がお薬みたいにやさしく染みこんでいきました。
終わってすぐに、もう一度聞きたいと思いましたが、録画をしていませんでした。街で偶然会った猫と同じように、このお話とも、一度きりの出会いでした。

そのとき以来ずっと、「もう一度、あの話と出会いたいなあ」と思っていました。「任務十八年」というタイトルもすごくインパクトがあり、最近何でも忘れてしまう私が、忘れませんでした。本になっていることを期待して、時折検索していましたが、なかなか見つけられずにいたのです。

そして数日前、6月に発売された角川文庫に収録されているとわかり、すぐに購入しました。ページを開くと、目次に「任務十八年」の文字。感動の再会でした。

もっと長い物語のように思っていたので、文字に起こすと6ページという本当に短い作品であることに驚きました。そしてたった6ページ、読了まで5分ほどしかかからないのに、読み終わると一匹の猫と、もしくは一人の人と、十八年間を共にしたかのような感慨深い気持ちになりました。テレビの朗読を聞いたときと同じように、泣きました。

また、「任務十八年」を目当てに購入したのですが、エッセイも感動しました。実は私、角田光代作品を読むのは初めて。最初から最後まで、共感しっぱなしでした。花子と一緒にいるときにわいてくる、言葉にできない何とも言えない気持ちを、角田さんが言葉にしてくれたとも感じました。

あなたは、犬派? 猫派? うさぎ派? それともハリネズミ派でしょうか?
何派でも、小さな生きものを愛するすべての人に、心底おすすめできる一冊。泣いたり笑ったり、「なるほど」とうなったり、読んでいる間中、とても忙しいでしょう。そして読み終わると、おうちの子をぎゅーっとだきしめたくなるはずです。

※注
『今日も一日きみを見てた』は、単行本(角川書店、2015年1月30日発行、1,188円)と文庫本(角川文庫、2017年6月25日発行、562円)がありますが「任務十八年」が収録されているのは文庫本のみです